本文
スウェーデンの民間企業であるバイオガイア(BioGaia)社の研究者は世界各国のあらゆる場所で人体に有益な乳酸菌を探し続け、その中からアンデス山脈に住む女性の母乳から分離したロイテリ菌(Lactobacillus reuteri)を口腔ケアに有用な製品製造に採用しました。また、日本人女性の口腔内やフィンランド人女性の母乳からもロイテリ菌を見出し、製品化に活用しています。これらの乳酸菌商品は在日スウェーデン大使館にあるバイオガイア・ジャパン株式会社が日本での販売を担っています。
最近、スウェーデンのバイオガイア本社から、広島大学に植物から探索分離したロイテリ菌を研究対象としている研究者が広島大学医系科学研究科にいるとの連絡が入り、未病・予防医学共同研究講座の杉山政則教授の話を聴くように連絡が入ったとバイオガイア・ジャパンの上席副社長が来校しました。
未病・予防医学分野で基礎研究を進めている杉山教授は、マタタビから分離したロイテリ菌BM53-1株が虫歯菌のつくるバイオフィルムに対する阻害物質を産生することを発見しています。
バイオガイア・ジャパンの野村慶太郎代表取締役会長からは、乳酸菌の分離源を安芸太田町地域でお願いしたいとの強い要望がありました。安芸太田町は、太田川の上流域に沿って形成された町で、良質な水でおいしい水稲や野菜や果物などの栽培に力を入れていいます。安芸太田町の総面積は約342平方キロメートルで、このうち森林面積が302平方キロメートルと森林が88.4%を占めています。標高約90メートルの南東部の太田川沿いと、北西部の県内最高峰である恐羅漢山(1,346メートル)など1,000メートル級の山々が連なる山岳地域との高低差などの地形が影響し、安芸太田町の気象には大きな差があります。
また、住民の高齢化率は51.77%である(令和4年)が、内閣府によると、日本の総人口が減少する中で、65歳以上が増加することにより、高齢化率は上昇を続け、令和18(2036)年には33.3%で3人に1人が高齢者となります。したがって、国内でも安芸太田町の高齢化率はきわめて高く、令和4年の統計によると、広島県の市町村別の高齢化率でも、安芸太田町は第1位です。
本研究では、安芸太田町で栽培されている農作物、花、薬草などを素材として乳酸菌の探索分離及びその保健機能の解析を行い、得られた植物乳酸菌のフレイル予防・改善に向けた発酵技術を開発することを目的としています。
また、安芸太田町の植物から探索分離したロイテリ菌(広島大学大学院医系科学研究科 未病・予防医学共同研究講座)のバクテリアセラピーへの実用化を目指しています。